「リンゴジュースは大好評」
早速お客さんがやって来ました。家族連れで2組が相次いで来店しましたので、冷蔵庫に冷やしていたリンゴジュースが足りなくなりました。目の前に大きなジュース搾り機があるのですが、臨時手伝いの3人とも使い方が分かりません。
頼りになるのは休憩室で遊んでいる、林檎亭次男で小学生の貴泰君だけです。
さすがに毎日親の仕事を見ているだけあり、すいすいと少しキズの入ったリンゴを丸ごと搾り機に放り込み、どんどんジュースを作ってくれます。
作りたてのリンゴジュースをたっぷりコップに入れて、一人一人に差し上げると、皆さんがきれいに飲んで、こう言います。「こんなに甘いリンゴジュースは飲んだ事が無い!」
あるご婦人は「以前、青森産のリンゴジュースを1本800円で購入して飲んだ事があるが、それよりもこのジュースの方がずっと甘くておいしい。」と感激していました。
生で食べると、品種的に蜜の入らない「つがる」はそれほど甘味もありませんが、ジュースにすると、砂糖とは違ったすっきりした甘さになるのは、何とも不思議です。
この日、ジュースを飲み残したお客さんは一人もいませんでした。
ちょっと横幅のある女性のお客さんも「こんなに甘いのを飲んで肥りはしないか心配だわ」と言いながら、きれいに飲み干していました。
都会の繁華街にも果物を丸ごと入れて、搾りたてのジュースを販売する小さなお店がありますが、1杯がかなり高い価格です。
落下したり、表面に傷が入ったり、形が悪くて出荷できないくずリンゴでも、こんなにおいしいジュースができるなら、都会なら1杯100円でも飛ぶように売れるだろうと考えました。
「りんごオーナーの方が来店」
都会からりんごの木のオーナーの方が来店しました。ご夫婦と奥さんの友人の3人組です。
もう小雨が降り出しています。準備が良く、用意したアノラックを頭から被り、靴を履き替えて、沢山のリンゴシールを手に、りんご畑に入って行きました。
すると、ご主人から脚立を使いたいと申し出がありました。でも脚立の置いてある場所が分かりませんので、また休憩室でカブトムシ相手に遊んでいる、貴泰君に尋ねます。
「りんご畑の2列目の所にある」と即座に、教えてくれました。
さすがに毎日りんごの木の下で走り回って遊んでいるだけあります。どこに何があるかまで熟知しており、小学生でも頼りになります。
大きな脚立を抱えて行くと、3人でうっすら赤くなり始めたりんごの、1個1個にシールを張っています。
透明なシールにはいろいろな人の名前が黒く書かれています。収穫したりんごを贈る相手先の名前が、ワープロで書いてあります。
りんごが赤くなった時に、文字の黒い部分だけが太陽が当たらないため、白く残ります。
贈られた方は自分の名前が真っ赤なりんごに浮かび出ているので、きっと感激するでしょう。他では買えない、世界でひとつだけの自分の名入りのりんごですから。
最近「葉摘み」という言葉を知りました。りんごが赤く色づくためには、太陽の光に当たらなければなりません。青々と繁った葉が邪魔をすると、りんごに赤い所と、青い所が出来てしまい、B級品になります。
そこで、このオーナーの方にも葉摘みの必要性を説明しましたところ、小雨の中、りんごの成っている近くの葉を濡れながら摘み始めました。
リンゴシールを沢山用意してあるため、手の届くすべてのりんごに張っても、まだ余っています。
奥さんに頼られたご主人が、脚立に上って上の方のりんごに張り始めました。
「車の運転だけでなくこんなこともしてもらい、来てもらって助かったわ」とねぎらいの言葉を掛けています。
そんな時、脚立の上は足場が安定しないため、シールを貼ろうとした手につい力が入ってしまったらしく、りんごがもげて落ちてしまいました。
1個のうちは何も言わなかったのですが、2個になり、3個になると、落ちたりんごは大きく見えます。奥さんが旦那さんにもったいないと注意しています。
友人のご婦人は、自分の名前のシールを張るので、大きなりんごを選んで、念入りに葉摘みをしています。ふと見ると、そのりんごは隣の木から伸びている枝に成っています。
後で気づいて「収穫の時に、隣のオーナーの方が見たら、知らない名前が張ってあると、驚くでしょうね。」と言いながら張り替えていました。
自分でりんごの手入れをしていると、愛着が湧くらしく、このご婦人もりんごオーナーになるからと、今回申し込んでいかれました。
ありがとうございます。今回の作業風景や、3人並んでの記念写真を撮影いたしましたので、収穫に来た時にご覧下さい。
丁度お昼の時間が近くなり、近所にオープンしたばかりのイタリアンレストラン「みのり」を紹介しましたら、細い農道をお店に向っていかれました。お味はいかがでしたでしょうか?
「白菜は野菜の一番人気」
林檎亭の入り口には採りたての野菜を並べて、販売しています。
白菜、かぼちゃ、ジャガイモ、きゅうり、トマト、マクワ瓜?、ナス、キャベツ、大根、トウモロコシ、バナナピーマンなど。
また店内には小豆、そしてメインのりんご「つがる」が良品、B級品、ジュース用と3段階に分けて並べてあります。大きな粒の花豆は売り切れたそうです。
女性のお客さんは必ず、野菜を購入されます。
最初に売り切れたのは白菜でした。当日の朝収穫した白菜は、新鮮そのものです。小ぶりの玉が100円。大きな玉は150円です。
後日都内のスーパーで野菜の価格をみたら、いかにこの価格が安いか分かりました。この値段では1/4カットの大きさしか買えません。
後から来たお客さんも必ず「白菜はないの?」と聞かれます。売り切れと聞いて残念そうにキャベツを買っていく方もおりました。
夕方暗くなって地元の方も立ち寄り、白菜が売り切れなのを見てがっかりしてました。今の時期に多量に出荷できればきっと蔵が建つかもしれませんが、誰も価格の予想ができないのが野菜栽培のむづかしいところです。
大根は近くの畑に植えてあるので、途中で収穫しに行き、間に合いました。大根は50円ですが、野菜購入者には無料サービスしてよいので、ほしいだけもっていってもらいました。
形は曲がったりしていますが、一番美味しい2Lの太さで、しかも採り立てで新鮮ですから、泥付きのままでも、この無料プレゼントに喜んでもらえました。
林檎亭掲示板に度々登場する、オオルリさまご一家にも、来店していただきました。(当日は名前を存じませんでした)
生憎雨足が強くなり、せっかくのりんごオーナーの木を十分慈しむ時間がありませんでしたが、沢山の野菜やりんごを購入していただきました。
都会の各地に送るため、ダンボール何箱にも詰め合わせで送らせていただきましたが、素人の私がダンボールに入れたため、下のほうになった野菜やトマトが潰れてしまわなかったか、心配です。なにせ、ダンボールの上部に隙間が空いたので、そこに重い大根を詰め込んでしまいました。
一緒に来た可愛い小学生のお嬢さんは、厚い長袖を着ていても、寒い寒いと震えていましたが、風邪をひきませんでしたか?
林檎亭次男の貴泰君と、隣のりんご園の息子の悪友2人は、半袖のTシャツ姿で飛び回っているので、寒さが身にしみた私は、山国の子供は寒さに強いと感心しました。
「トウモロコシの美味しさに感激の声」
来店のお客さんにはリンゴジュースと共に、茹でたてのトウモロコシ「味来」と「ゆめのコーン」を試食していただきました。
ほんの少しだけの量しか出せませんでしたが、「とても甘くて美味しい」「こんなに美味しいトウモロコシは初めて食べた」「今まで食べたのとは全然違う」と、口々に称賛の言葉がありました。
トウモロコシは1日ごとに甘味が失われるので、試食されて購入していく方が必ず、どう保管したら一番美味しい状態が保たれるか、質問されます。
りんごの保管方法の質問があったときには「あるある大辞典」で紹介された、1個づつラップに包んで冷蔵庫の野菜室に入れておくことが望ましい、と胸を張って答えられたのですが・・・。
なるべく、日にちを置かない内に食べきってもらうのが、美味しく食べるコツですので、食べられる量だけを買ってもらいました。
当日は多量にトウモロコシを採り入れてあったので、3時になってもまだ半分以上も残っています。
店番の3人で売れ残りを心配していたところ、背広姿をバシッときめた、押しの強そうな男性が1人で来店しました。
恐る恐る試食していただいたところ、気に入ったとみえ、携帯電話で自宅に電話して、家人に送り先の住所を調べさせています。そしてなんと10kgを2箱と5kg1箱を購入いただきました。収穫してある本数では間に合わないため、1箱は翌日発送にさせていただきました。
翌日に残したくないトウモロコシが完売したので、ひと安心です。
見た目は怖くて、元気の良い若者を使う、その筋の親分かと思いましたが、後で、尾瀬戸倉スキー場の幹部の方と聞きほっとしました。
夕方遅くにも鎌田のW製菓の奥さんが、味来というトウモロコシが美味しいと聞いたので、購入したいと来店しました。でももう売り切れてありません。
事情を聞くと、とうもろこし街道の売店では、必ずしも自分で栽培をした品物を売ってないことが分かったので、ぜひ栽培した農家から買おうと思っていたとのこと。街道の売店に不信感を抱いたのは、片品で栽培していないはずの玉ねぎを平気で売っているのを見てからであると言う。
街道の売店はどのお店が、農家直売なのか見分けがつかないので、迷っていたが、この林檎亭なら、農家なので間違いないとわざわざ買いに来てくれたらしい。
これほどトウモロコシの味に期待してくれるなら、試食用に残っていた小さいトウモロコシを無料であげて、後日また購入に来てもらおうとしました。
でも、どうしても代金を支払うと申されるので、半額以下の50円で10本購入していただけました。りんごの美味しさも知ってもらおうと、大きなつがる2個もおまけに付けました。
白菜も希望されたのですが、もう売り切れなので替わりにキャベツを購入していただきました。
「味来」は果たして期待した美味しさだったでしょうか?
お客さんは結構身近にもいるものです。
「はるばる山梨からのお客さん」
駐車場に入ってきた車を見ると、山梨ナンバーです。
先日の掲示板に、日光の帰りに寄ってみると書き込みいただいた方でした。(まゆみ様)
坂道のカーブが連続する日光への道は、毎日車に乗っている者でも、緊張の連続で疲れます。まして雨で見通しも悪い当日は、かなりお疲れになったと思います。
本来なら山並みや湖のきれいな景色が見られる、片品と日光を結ぶ日本ロマンチック街道です。でも今回のように雨の時は標高が高く霧が出やすいため、まっ白で何も見えないつまらないドライブになってしまいます。
当日は沢山のりんごなどお買い求めいただきながら、他のお客さんの対応で混乱しており、接客がおろそかになり申し訳ありません。
せっかく遠方から来ていただきながら、片品の見所などについての説明も出来ず、期待が裏切られたことでしょう。
これに懲りず機会がありましたらまたお越しください。子供さんには一面が雪に覆われる冬の雪国体験も、良い思い出になります。スキーやスノボーなど転んでばかりで、自分が雪だるまになっても、夢中になれて楽しい時間が過ごせます。
片品村内は何ヶ所もあるスキー場でなくても、自分の足で歩いて登れば、斜面になっている所はどこの畑でも全て天然のゲレンデになります。思いきり大声を出しながら転んでも、誰にも迷惑が掛かりません。
林檎亭のそばには、昔は小中学校専用のスキー場がありました。今は地もとの人達がラベンダーを植えていますので、冬は誰も入らない貸切のゲレンデになります。
「率先してPRしてくれる方」
朝一番のお客さんは、来店するなり「ここは時夫君のお店かな?前にこの林檎亭のPRチラシ(パソコンで手作りのプリント)を見たことがある。そのチラシをもらえれば皆に配って紹介しておく」と言って沢山受け取っていきました。
口コミで紹介してもらうのが、販売に一番効果的です。
利根沼田地区には沢山のりんご園がありますが、初めてりんご狩りに来る人は、どこに寄ろうか迷ってしまいます。
知り合いから片品林檎亭の名前が出れば、初めての方もきっとここに来てくれるでしょう。
「インターネットが結ぶ縁」
りんごは品種によって収穫時期が異なります。
りんごオーナーの方にいつ頃収穫できるか質問されましたが、臨時店番なので何も知りません。
聞くとパソコンがあるとのことなので、林檎亭の手作りチラシに載っているホームページ(HP)を示して、「毎日更新しているので、ここに収穫時期が掲載されるから見てください。」と答えました。
写真が載れば誰でも生育状況が分かります。
情報が新鮮なまま、格安のコストで伝達できるインターネットは、個人でも大企業と同等に競える、大変便利な道具です。
りんご栽培のメッカである、信州や青森には優れたりんご園のHPが沢山ありますが、群馬県のりんご園では、この片品林檎亭のHPが一番充実していると思われます。
毎年30%づつ増えているパソコンの所有者のほとんどは、インターネットの利用者でもあります。
初めて訪れる所は事前に調べられれば、安心して訪問できます。
HPを業者任せにせず、手作りで開いている優れたサイトは、インターネット利用者の目に留まります。
ここのHPにアクセスした方は、片品に来た際に、きっと林檎亭に立ち寄るでしょう。
「奥さんのお土産に新鮮なりんご」
明日の葬儀に出られないから今日お通夜に来たと、喪服姿の紳士が暗くなってから立ち寄りました。
帰りがけなので、奥さんへのお土産に柔らかいりんごを購入したいとのこです。
自家用なら形が悪いB級品でも味が同じですので、この半額の品を薦めました。
ずっしりと重いほど袋に入れても1000円でお釣りがあるので、「えっ」と格安なのに驚いていました。
買っていただいたお客さんにこんなに喜んでいただき、暗くなっても林檎亭を開けていた甲斐がありました。
食べた奥さんの評価は如何でしたでしょうか?
「混乱の一日が無事終わる」
雨にもかかわらず、多くのお客さんに来ていただき、無事店番も終わりました。
お客さんが重なると、3人の臨時店番は混乱して、接客対応がおろそかになってしまいました。
それでも何とか片品的美人の2人の活躍で、売上も上がりました。私はうろうろしていただけですが。
当日来ていただいた方も、いつか片品に行ってみようかと思っている方も、きれいな紅葉の始まるこれからの季節に、ぜひまた片品林檎亭にお立ち寄りください。
おいしいりんごが次々と収穫時期を迎えて、真っ赤に熟し、皆さんにもいでもらうのをお待ちしています。
(店番した日 平成12年9月23日)
(記載日 9月29日)
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